光建の1年間の取り組み
継続で行っているブランド構築に向けた取り組み
- SNSを使ったブランディングの発信
- 共感を高める社内報づくりの取り組み
- アウトプットを重視したインターンシップ
新たに取り組んだ施策
- 会社シンボルを発展させたオフィシャルマスコット作成
- 入社2年目社員の企画・実施による内定者懇談会
- 研究成果を発表する展示会における会社の価値観をアピール
継続で行っている取り組み①「社内の雰囲気のアピールツール、Instagram」
―昨年のDYNA参加中には、「理念の再構築」と「接点の場作り」に取り組まれたかと思います。DYNA第1期参加後、この1年間では、どのようなことを行いましたか?
昨年開始したInstagram https://www.instagram.com/kouken_nagoya/ は現在も継続しています。総務部の社員2名と私で「広報部会」というチームをつくり、週2回ほど投稿しています。
ホームページにはいろいろな情報を載せていますが、どんな人が働いているかまでは伝わりづらいです。Instagramでは動画も気軽に載せられて、見る人の受けも良いと感じています。会社で行ったBBQ大会の投稿は、当社の雰囲気を表している良い動画でした。実際に「動画を見ました」という声をもらうことも多いです。
―どのような人からInstagramへの反応をもらいますか?
インターンに参加する学生や内定者です。「こんな取り組みをしているんですね」と投稿した内容が話題に上がったり、「〇〇のイベントに参加するのが楽しみです」と言ってもらったりしています。
当初は新たな応募者にリーチしたいと考えていたのですが、これまでにInstagram経由での応募はありません。しかし、別の経路で当社を知った人が、Instagramから追加で情報を得ることで、より興味を持つことにつながっているようです。アピールのツールとしてしっかり機能していると思います。
継続で行っている取り組み②「見えない頑張りに光を当てる、社内報」
他に継続している取り組みとしては、社内報の発行があります。当社は建設会社なので、ほとんどの社員が現場に出ていて、社員同士が他の現場で何が起きているのか知らないことも多々あります。「現場はこんな感じだったんだ」「社内ではこんなことが起きているんだ」など、社内間の情報伝達手段として機能していると思います。
最初の頃は、社内報担当のメンバーだけが記事を書いていましたが、最近は社員からの持ち込み企画も生まれています。たとえば先月は、バイク好き社員による「バイク同好会」なるものが立ち上がっていて、行った場所の紹介等、活動の様子が載っていました。仕事以外での取り組みも紹介できる場として市民権を得ているような印象があります。
―社内報に掲載するのはどういったテーマなのでしょうか?
いくつかのテーマがあって、その中から毎月選んでいます。
現場を取り上げるときは、これから建設が始まるタイミング、終わったタイミングなどメモリアルな時にフォーカスして発信しています。優れた工事をすると発注元のお客様から表彰してもらえるので、表彰も必ず載せるようにしています。
「見えないところで頑張っている社員に光を当てたい」というのが社内報の最大のねらいです。現場にいるとチームで動いていたとしても孤独な戦いになりがちです。他の社員とは接点がなく、お互いの仕事を知る機会がありません。現場に直接関わっていない社員も、「こういう仕上がりになったんだ」と知ることで、お互いを称え合う気持ちになってほしいと思っています。
また、仕事の話だけでは、読む人が楽しくないので、現場のご近所グルメや宿情報も自由に載せられるようにしています。長野の現場に行った社員がお蕎麦屋さん巡りや美味しい焼肉屋さん情報を載せていたり、いい温泉宿についてレポートしたりしていました。
あとは、新しく入った社員の紹介、子どもが生まれた報告、誕生日の社員紹介のコーナーがあります。経営者メッセージの欄には私も文章を書きます。偉い人の話が長いと嫌じゃないですか。だから私は気軽に読んでもらえるように、昔のTwitter方式で140字という縛りを設けて書いています。
―社内報に対する社員の反応はいかがですか?
シャイだからか、表立って「読みましたよ」とか、「この記事を書いてくれてありがとう」などと言われることは少ないです。しかし、バイク同好会が発足したことに現れているように、こんな記事を書いて下さいと言うケースも出始めていることに加えて、話のネタが生まれたり、社員間の交流のきっかけになっているのではないかなと感じています。

継続で行っている取り組み③「アウトプットを重視した、会社にも参加学生にもメリットが得られるインターンシップ」
従来のインターンシップは、現場見学だけで終わっていたのですが、DYNA参加後は、小さくてもいいから形になるもの、成果物を作ってもらうようなインターンシップにしています。たとえば、Instagramの動画や記事などです。当社社員と協力してプログラミングを活用した”ものづくり”を行った例もありました。
最近の採用活動においては、インターンシップは必須だと捉えているのですが、インターンから直接採用に結びつくかというとそれは難しいのが現状です。
そこで、学生にとっても学びになる機会を提供し、インターン生の成果が直接社内の取り組みに活かされるような、会社にとってもメリットのある方法を考えて、今の形を継続しています。
当社は海外人材の採用にも力を入れていて、社員比率が20%ほどとなっています。地域の建設会社としては多い方です。インターンシップは、国内人材と海外人材で分けているわけではありませんが、その人その人に合わせた内容を用意します。
インターンに参加してくれる海外人材の中には、卒業後、自国に帰る学生も少なくありません。しかしながら、経歴に魅力や特色のある方がたくさんいるので、必ずしも直接採用に結びつかなくても、情報のインプット・アウトプットの機会として位置付けて実施しています。
そうすることで、海外人材の採用に力を入れている会社であるという対外的なブランディングにもなると考えています。
新たに取り組んだ施策①「会社シンボルを発展させ、オフィシャルマスコットをつくる」
―昨年、社名にもある「光」の字をもとに会社シンボルをリニューアルし、任された仕事をやり切る熱い静かな青い「火」と、インフラを通じて社会を支える「人」(社員)のイメージをシンボルに込めたお話が印象的でした。
この新しいシンボルを活用するなど、会社のブランドイメージのアップデートはその後も行われていますか?
シンボルから派生して、オフィシャルマスコットを作りました。どこかに頼んで可愛いキャラクターを作るのは簡単ですが、せっかくDYNAで採用ブランディングとしてMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やシンボルを作ったので、それを活かせる方法にこだわりました。
まず、採用ブランディングなので学生とコラボして作りたいと思い、知り合いの先生に頼んで芸術系の学生に応募をかけました。キャラクターを作ることができる学生を集めて面談を行い、会社理念やコンセプトを理解しながらキャラクターに反映させてくれそうな学生さんを探しました。
依頼する方が決まったら、理念やシンボルの説明だけでなく、会社がどういう仕事をしているのか知ってもらうために現場ツアーを企画し、何度かやり取りを重ねながら作っていきました。
そのような過程を経て出来上がったものがモーラちゃんです。
率直に、どんな印象をもちますか?
企業のマスコットというと、ゆるい、可愛いキャラクターを作ることもできると思うのですが、それだと建設業のリアルが伝わらないと思いました。なんというか、ちょっと擦れている感じを出したくて、学生にはそのような依頼に応えてもらいました。
まっすぐな瞳で未来を見据えていて、現場の酸いも甘いも知る、寡黙ながら頼りになる存在的なキャラクターに仕上げていきました。綺麗な部分だけでなく、泥臭い部分もしっかり表現するようなマスコットにしています。
対外的に何かを発信したり作ったりするとき、当然、会社のかっこいい部分にフォーカスを当てがちです。建設の現場もかっこいいのですが、泥臭い世界であることは間違いないと思います。仕事を軽く見られないように、現場のリアリティにフォーカスを当てたいという思いを込めました。


さらに、いろいろな広がりを持たせるために、ライバル的存在のキャラクター、メカモーラちゃんも作りました。
ちょうど現場でもAI技術を使い始めているなかで、メカニックな印象のキャラクターも両方いると、いろいろな使い方ができるのではないかと思っています。現在は、プレゼンテーションのスライドの中で使用していて、今後は販促品を作ってプロモーションに繋げていけたらと思っています。
一般受けするキャラクターというよりは、現場の雰囲気を伝えることと独自性を大切にしたので、どれくらい受け入れられるかは分かりませんが、よく見ると可愛いというか、癖になる存在として社内外の人に愛着を持ってもらえたらいいなと思っています。
―どうしてマスコットを作ることになったのですか?
展示会に出展すると、多くの企業が販促品を作っていて、当社はアピールするネタが少ないなと思っていました。また、ブランディングの文脈でもマスコットを絡めることで個性を発揮できると考え、せっかくシンボルや理念を作ったので、その延長として、自然な流れで作ることになりました。
―出来上がったマスコットに対して、社員の反応はいかがでしたか?
最初は、「おおおっ?」という感じでしたね。「可愛い〜」ではなかったです。だけど、よく見ると可愛い顔をしているし、「なんとなく言いたいことは伝わります」という声をもらっています。
新たに取り組んだ施策②「内定者懇談会の企画・実施を入社2年目社員が担当」
毎年、内定者懇談会を行っていまして、例年私が準備していたのですが、今年は入社2年目の社員に企画から運営まで全て任せました。
2年目の社員で、社内サークルを立ち上げるなどリーダーシップを発揮しているメンバー2名に声をかけて、チームビルディングを目的にしたゲームを入れることだけは唯一の条件として伝え、自由に考えてもらいました。当日は、参加した内定者と社員が汗だくになるくらいアクティブなゲームを行い、親睦が深まりました。参加者の満足度も高かったようです。
―これまで正田さんが行っていたことを、社員に任せてみて、どんな学びや気づきがありましたか?
私が一歩引いて企画・準備・実施を行ったことは重要なチャレンジとなりました。日々の業務でも、社員に企画の部分からもっと積極的に関わってほしいという思いが常々ありましたので、その一例として成功した取り組みだったと思います。社員の能力を活かす場を提供する方法が示せて良かったです。
最近の当社の採用の傾向として、人付き合いが上手な人を重点的に採用するようにしています。現場でチームワークを大事にできる人、現場以外の違う取り組みも任せられそうな人を意識的に採用しているのですが、なかなか企画力を発揮するチャンスを作ることができていませんでした。
建設の現場だけでなく、内定者懇談会や採用の場においても、社員の様々な能力を発揮する機会を作ることが大事だと思っています。日常の業務とは違う内容で、それぞれの強みを活かせる機会を作っていくことが私の仕事だと思っています。社員も「楽しかった」と言っているので、それができてよかったです。
新しく入ってくる社員にも、「将来、こういうことができそう」と思ってもらえるので、良い循環を生み出せるのではないかと期待しています。

新たに取り組んだ施策③「展示会で会社が大事にしている多様性をアピール」
他には、研究開発系の「AXIA EXPO」https://axia-expo.nikkan.co.jpという大きな展示会に当社もブースを出展し、その際にも会社のブランドをアピールしました。
展示会への出展は、昔はやっていたのかもしれませんが、私が知る限りでは初めての取り組みです。採用のためのイベントではありませんが、そこで研究成果だけでなく会社のアピールも行いました。
会社のブランディングの中で一番押し出したいポイントとして、「多様性」をアピールするポスターを掲示しました。
『年齢、国籍、性別、学歴、経験も 多様性こそ光建の未来』というコピーを真ん中に据えて、そのまわりに研究開発のポスターを並べるという構成でブースを作りました。新しい強みである多様な組織づくりと「ゲンバを科学する」取組が今の当社が目指す方向性かつブランディングで、当日のブース運営は、こちらに写っている女性社員に任せました。
学生向けのイベントではないので、求職者の獲得に直接つながるわけではありませんが、「面白い取組をしている会社があるのね」という反応を各方面から頂けました。愛知県の方や名古屋市の方、いろいろな団体にアピールできて、認知度が上がったと思います。
研究成果だけをアピールするのではなく、「どのような思いをもった、どのようなことを大切にしている会社が、こんな仕事をしている」と伝えられたことで、強く印象に残ったのではないかなと思います。
採用ブランディングの意義 「期間限定の支援をどうその後に繋げるか」
―どのような会社に採用ブランディング構築は必要だと思いますか?
採用ブランディングのアイデアを既に持っているけれども、打ち手がない会社には良いと思います。
コンセプトを作るのは大変なのですが、作った後そのコンセプトで走るのも当然とても大変です。実際の採用に関する施策のアイデアもない場合だと、コンセプトを作っただけで満足してしまいがちだと思います。
自分たちで走らせたい案があるけれど、実現するリソースがないところや、基盤となる案が既にあって、それを磨きたい会社がこのような機会を利用することで、自分で走ることができるようになると良いと思います。
―これから採用ブランディングを始めていく企業に向けて、これは大事にした方がいいなと思うアドバイスがあれば教えてください。
採用ブランディングに限らず、こうした行政の期限付きのサポート事業全般に言えることなのですが、伴走者との走り方を間違えないようにすることが大事だと思っています。
期間限定のサポートを受けたところでその人の能力や会社の内情が激変することは絶対ありません。それをどのように今後につなげていくかが大事なのだと思います。
ブランディングはとても時間がかかります。コアとなるコンセプトを伴走支援者と一緒に作ったら、それを自分たちで育てていかないといけないので、中長期的な目線をもって、会社をどうしていきたいかを考えることが非常に重要です。
昨年DYNAを通じて理念の再構築と接点の場作りに取り組んだ、株式会社 光建は、その後も社内外へのさまざまな施策を継続し、伴走期間終了後も中長期的目線で自社のブランディングを育て、走り続けています。
表層的な親しみやすさではなく、現場のリアルを追究して本質的な魅力を価値として表現したり、採用の場面だけでなく研究成果発表などさまざまな場面で会社のブランドをアピールしている姿勢は業種を超えて参考にできるのではないかと感じました。
DYNA 終了後も、継続して試行錯誤を行う姿勢を追っていくことで、会社が成長・成熟する過程のヒントを今後も得られたらと思います。