DYNA|名古屋市中小企業採用ブランド構築支援プロジェクト

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2025.03.18

社員全員で築く採用ブランディング ー DYNA参加による”働く姿”の言語化(有限会社ザットインターナショナル)

名古屋市の中小企業採用ブランド構築支援プロジェクト「DYNA(ダイナ)」は、キックオフセミナーやワークショップ、そして専門家(*)の伴走支援を通じて、市内中小企業者が採用ブランド構築に取り組む実践型プロジェクトです。

今回は第2期(2023年10月~2024年9月)の参加企業として自社の採用ブランド構築に取り組まれた、有限会社ザットインターナショナル 代表取締役の大矢善司氏・採用担当の小笠原紀子氏にお話を伺いました。

ザットインターナショナルは、名古屋を拠点にキャラクターショーやイベントの企画・運営を行う企業です。音響や照明、映像制作に関連する専門的なサービスを提供し、キャラクターショーなど、さまざまなイベントを実施しています。毎年、採用人数は目標を達成していましたが、年々応募数が減少していることに課題を感じていました。そんな中で、名古屋市が主催するDYNAに参加し、企業ブランドや採用戦略の再構築を始めることになります。

この1年間で、採用活動にどのような変化があったのか。DYNAを通じて得た知見と実際の取り組みについてお話を伺います。

*専門家

・アドバイザー:経営や採用、コミュニケーションの課題に対し、専門的なフィードバックと助言を行う。

・伴走ディレクター:企業の採用ブランド構築を支援し、計画作成から進捗管理、課題解決までを共に行う。

 

「学生の関心は高いが面接につながりづらい。そのハードルをどう乗り越えるか」

―DYNAに参加したきっかけを教えてください。

大矢:

これまで17〜18年の間、新卒採用を続けてきました。採用ブランディングとは具体的に何をすれば良いのか興味があり、今回応募しました。

企業のブランディングであれば他の企業との差別化のイメージが湧くのですが、採用ブランディングとなると視点が変わってくると思います。何が違うのかを知りたいと思ったのが参加の動機です。

 

DYNAに参加する前、採用活動ではどのような取り組みをされていましたか?

大矢:

新卒採用を始めて18年程経ちますが、最初の2〜3年間は、民間と行政が共同で行っていた採用事業に無料で参加していました。その後、団体の共同求人に参加し、合同企業説明会に出展しました。1日に100〜150人ほど集まる採用イベントでしたが、あまり集客力がなく、共同求人で採用が足りないときには、冬頃から新卒の学生紹介サービスを使って補っていました。

コロナ禍になり新卒紹介サービスの費用対効果が感じづらくなってからは、就職情報サイトに有料で求人を掲載するようにしていました。この間、新卒採用は毎年2〜4人を採用していました。

採用の目標数は達成していたとのことのですが、課題は何かありましたか?

大矢:

ここ数年で応募が少なくなってきているのが気になっていました。就職情報サイトの担当者が言うには、私たちの会社に限ったことではなく、全体的に応募者が少なくなっているとのことでした。学生の応募の選択肢が増えていて、1社に対する応募が少なくなっているのだと聞きました。

小笠原:

私たちの会社は比較的目を引く、学生が興味を持つような仕事ではありますが、面接に進む人が減っているという課題がありました。

大矢:

会社説明会で詳しく話をしていくと、「土日はほとんど現場があって平日休みが中心になる」「現場の日は朝が早くて帰りは遅くなることが多い」「基本的に時間が不規則になる」と働くイメージが具体化する中で、1次面接に進む人はどうしても伸び悩んでしまいました。どんなに仕事の楽しい面を伝えても、「月に1本くらいだと思っていた」「毎週現場があると思わなかった」という声をよく聞きます。実際は何十という現場があり、忙しいと1日に30~50本程の現場がある時期もあります。説明会前にそういう想像がついていない人が多い印象でした。「面白い会社」「楽しそう」と思ってもらえても、学生が「働きたい」と思うにはギャップがあるように感じていました。採用ブランディングによってそこを乗り越える必要性を感じていました。

取り組んだ施策「現場社員を巻き込んだ採用活動の仕組みづくり:説明会での先輩座談会」

DYNAに参加したことで、採用活動において新しく始めた取り組みはありますか?

小笠原:

会社説明会の際、以前は代表の大矢と採用担当の私の二人だけで行っていたのですが、現役社員を巻き込んで、座談会を組み込むことにしました。

以前は、大矢が業務内容や組織体制、労務・給与面を説明し、私が社内の雰囲気や、社員の特徴を話していました。しかし、それはあくまで私が感じている雰囲気や特徴なので、実際に働いている社員が座談会形式で会社について話をし、応募者にリアルな会社の特徴を感じてもらう機会を作りました。

 

説明会に現役社員の座談会を組み込んだことで、どんな変化がありましたか?

小笠原:

その回に参加してくれた学生さんは、ほとんどが面接に進んでくれました。学生さんからの質問も活発になるなど、手応えを感じました。ゴールデンウィーク明けの座談会に、まだ入社したての1年目の社員に協力してもらったときには、「現場はすごくハードで忙しくて、実は毎日泣いていた」と話す子もいて、「だけど、先輩がこういうふうに声をかけてくれたから勉強になって、頑張っている」と正直なことを語ってくれました。このリアルな声が学生に響いているのだと思います。こういう機会だからこそ、1年目の社員の想いや成長が見えて、インナーの面でもとても良い会だったなと思います。

大矢:

今回伴走ディレクターの方が入って最初にミーティングをした際、現役社員が会社のいいところも課題もきちんと話せることに気づくことができました。参加したのは年次が5年以下の若手で、中には1年目の社員もいたのですが、皆会社の魅力について自分の想いを話していて、普段仕事にどんな気持ちで取り組んでいるのかを語れていたのは嬉しい驚きでした。

小笠原:

その他にも、社内の採用に対する理解や関心が高まったことが良かったと感じています。「応募者に会社の魅力、ここで働く楽しさを伝えるのって意外と難しいね」と、採用の大変さに共感する声も聞こえてくるようになり、全社で採用活動に取り組んでいる、皆が協力してくれると思えるようになりました。

 

現役社員の座談会をすることになった経緯を教えてください。

小笠原:

DYNAの伴走ディレクターの方に、採用活動を社長と2人だけでやるのではなくて、「もっと社員を巻き込んで、会社全体で取り組んだほうがいいよ」と言われて、説明会のやり方を考え直したことが始まりです。

そこで、説明会の事前打ち合わせで先輩社員へ「会社の魅力について話してほしい」とお願いしました。するとその場で、「うちの会社の魅力ってなんだろうね?」という議論になり、それを見ていた伴走ディレクターが「この社員同士の掛け合い、フリートークの感じが良いから、これをそのまま座談会形式にして応募者にも見てもらうのはどうか。社員同士の雰囲気も伝わりやすいし」と言ってくださいました。

大矢:

それまで他の社員は、特にキャリアの長い社員において、採用は自分に関係ないと思っている人も多かったと思います。でもどの部署であっても、新しい社員が入って今ある仕事を次に渡すことで、新しく仕事を広げていくことができますから、本当は全員が必要性を感じて、全員で取り組めることが理想的です。社員を巻き込んだ座談会は、そのきっかけになっていると思います。

 

 

 

施策の成果「”好きなこと、得意なことを仕事にできる”会社の採用キャッチコピーが生まれるまで」

DYNAへの参加を通して、他にどのような気づきや成果がありましたか。

小笠原:

会社の採用キャッチコピーを見つけることができたのがとても良かった点です。

思い返すとこれまでの説明では、会社の雰囲気やここで働く魅力について、「楽しいですよ」「こういう感じですよ」と、ふわっとした内容しか伝えられていなかったように思います。

それを今は「好きなこと、得意なことを仕事にできる」というキャッチコピーで表現するようにしています。専門学校で音響を学んだ人が音響を扱う仕事や音源制作の仕事をしていたり、ヒーローが好きな子がヒーローショーをつくる仕事をしていたり。この言葉が私たちの仕事や働く姿を明確に表現する言葉だと感じています。

 

キャッチコピーはどのようにして生まれたのでしょうか?

小笠原:

座談会の事前打ち合わせで、会社の「ここがいい」「ここが嫌だ」と思う点を社員で出し合う時間を設けました。出された意見を見た伴走ディレクターが「ザットインターナショナルのいいところって、こういうことなんじゃない?」と、このキャッチコピーにまとめてくれました。私たちは楽しいからだけではなく、「好きなこと、得意なことを仕事にできる」これがあるから入ってきているよねというのを確認し合うことができました。

今では説明会でもこのキャッチコピーとともに、「こんな熱い想いをもった社員がいる」「この社員は、こういう気持ちで働いている」と、現役社員の働く姿を学生さんに紹介することができています。

 

今後の展望「好きなこと、得意なことを通していきいきと働く姿を、若手から」

最後にDYNAのプロジェクトを終えて、今後の採用活動においてどのようなことを目指していきたいですか。

大矢:

新卒採用はこれからも継続していきますが、やはり会社全体を巻き込んでいくことが重要だと考えています。まだ採用を他人事と思っている社員もいますが、採用が進めば職場環境や業務の流れも変わります。特にベテラン社員になるほど、採用に無関心になりがちですが、新しい人が入ることで仕事の引き継ぎが進み、各自が新たな仕事に挑戦しやすくなります。社員全員が採用の意義を理解し、主体的に関わる仕組みを作っていきたいです。採用を通じて会社が変わることを社内にしっかり伝え、全員で取り組める体制を整えていくことが今後の目標です。

小笠原:

新入社員が入社の動機や会社の魅力を問われた時に、「好きなこと、得意なことを仕事にできる」というキャッチコピーを新入社員の口からも語ってくれるようになったら理想的です。

それは、私たちがザットで働くうえで感じている価値が新しく入社する方にもしっかり伝わったことを意味しますし、共感するもの、大切にしたいことが近しい人が仲間になってくれたということだと思います。

現役社員と座談会の準備をする中で発見できた「好きなこと、得意なことを仕事にできる」という私たちの会社の魅力・価値が、このキャッチコピーを介して新しい仲間との縁を繋ぎ、一緒に会社の未来をつくっていけるように、採用活動の軸として大事にしながら今後も取り組んでいきます。

 

 

新たな採用キャッチコピーを軸に、社員一人ひとりの価値観や強みを大切にしながら、チームを形づくるザットインターナショナルのこれからに引き続き注目していきたいと思います。

 

Intervieweeインタビューイー

大矢善司
有限会社ザットインターナショナル 代表取締役

愛知大学法経学部卒業後、会社の前身となるアクションチーム『ZAT(Zero-base Action Team)』を結成。4年後に法人化し、有限会社ザットインターナショナルを設立。東映の代理店としてキャラクターショーの実施をはじめ、あらゆるイベントを展開し、現在では、着ぐるみ製作、映像制作、グッズ制作、ダンススクールなど、多岐に渡る業務を展開中。

小笠原紀子
有限会社ザットインターナショナル 採用担当

目白大学卒業。好きな特撮作品と関わりたいと思い、2022年度に入社。(入社3年目) 2年前から新卒の採用担当となり、業務を行っています。同じ目的、目標を持った仲間を日々探しています!