DYNAとは
中小企業採用ブランド構築支援プロジェクトです。名古屋市内の中小企業の魅力を発見し、磨き上げ、仲間が集まり、人と社会とともに成長すること、ダイナミックで活力に満ちる会社を名古屋の地から次々と育んでいくことを目指しています。
求職者が“働く意味”を求める今、中小企業こそ大きなチャンス
第一部は、株式会社ミテモ代表取締役の澤田氏より「中小企業だからこそできる。求職者から選ばれ、社員や地域社会からも求められ続ける会社の作り方」と題して基調講演が行われました。
「日本の生産年齢人口の減少による人材不足。深刻化するのはまさにこれからと言われています。昨年のトレンドにもなった人的資本経営の実践を、投資家が大企業に問う時代に入り、働き手の立場からすると“働く先の選択肢”が増えていくことになります。愛知県の人口転出データを見ると、キャリアアップ思考や意欲の高い人ほど流出していることが分かります。地元で働きたい企業がないと“認識”されていることが課題であり、中小企業は優秀な人を採用できないというのは経営者の思い込みに過ぎません。採用に成功している企業は、規模の小ささを強みに変えて“ビジョンを軸に、組織・事業の両輪を創る”というデザイン経営を実践しています。求職者が意味や働きがいを求めている今だからこそ、ビジョンを会社の隅々まで浸透させることができる中小企業には大きなチャンス。純度の高い会社に、純度の高い人々が集まってきます。“いい会社”を作る好循環を生み出すことに注力すると採用にも効きます。DYNAを通じてデザイン経営の組織づくり実践プロセスを体験してみてください」と、これから始まるDYNAへの期待が高まる内容で基調講演が締めくくられました。
主導権を持てるブランド構築で、理念共感型の採用を実現
第二部は、デザインの力と中小企業のブランド構築の実践例として「神戸マッチのブランド構築10年の歩み」について、神戸マッチ株式会社代表取締役の嵯峨山氏よりお話がありました。その後、ブランド構築の主軸となるhibi (ヒビ)の商品開発を共にし、長年に渡り神戸マッチと伴走しているトランクデザイン株式会社代表取締役・クリエイティブディレクターの堀内氏とのトークセッションが行われました。堀内氏はDYNA実践プログラムのアドバイザーでもあります。
神戸マッチは兵庫県にある1929年創業で、マッチ製造・販売を事業としている会社です。嵯峨山氏の祖父が創業し、現在では従業員36名、売上7億の規模で、近年では20代の若い人材も採用できています。主力商品はhibiというマッチ型お香で、兵庫県の2つの伝統産業である播磨マッチと淡路島のお香がコラボしたもの。売上の5割を占めており、過去最高の経常利益を出すことができました。hibiは、業績が悪化し苦しい決断が続いていた2011年頃、嵯峨山氏のマインドイノベーションから「マッチを灯す行為を文化として語り継ぐ」という思いから始まりました。
「経営の目的は、社会貢献・人の役に立つこと、社員を幸せにすること。経営者の責任は、業績を上げることです。それに尽きます。いくらカッコいいビジョンを掲げたとしても、業績をあげないと事業を続けられない。3つの経営資源(ヒト・モノ・カネ)に“ブランド”という第4の経営資源を掛け合わせることで、企業価値が大きく引き上がります。これが私自身の経験から出来上がった方程式。デザイン経営によるブランド構築により、主導権を持てるビジネスモデルが構築できる。そうすることで処遇や条件ではなく理念共感型の採用ができるようになり、現在ではハイスペックな人材からも応募があります」と嵯峨山氏。
また一方で正社員の募集をしたことがないけれど、人が集まってくるというトランクデザイン。堀内氏は「嘘をつかない、未来に残っていくデザインをしたい」と、それまでの広告制作の仕事から離れ、現在のトランクデザインを立ち上げました。
「兵庫県の地域産業や伝統工芸といった地域にあるものづくりや技術を編集して発信する会社にシフトチェンジしていき、トランクデザインらしさを突き詰めていきました。日本全国のものづくりを未来につなげることを一直線に、この10年進んできました。これまで正社員の募集を行ったことはないのですが、よくメールや採用のお問い合わせをいただきます。私たちはブランドを持つメーカーであり、店舗のある小売店や飲食や製造もやっています。また自社サイトや私個人のSNSの発信などをあらゆるところを見て、トランクデザインのビジョンを感じ取っていただいたのかなと思います。ブランドが構築できて、それを発信して、求職者が会社を見つけられる状態に持っていくのが大切だと感じています」と堀内氏。実際にトランクデザインへ転職された方もトークセッションに加わり、理念共感型の採用ブランディングの具体的な事例が展開されました。
2025年新卒採用の新ルールを理解し、中小企業が勝てる採用戦略を考える
第三部は、採用コンサルタントでもある株式会社NOMAL代表取締役の松本氏より「採用活動のリアル。求職者の視点で考える選ばれる企業の採用活動の秘訣」について解説いただきました。松本氏は、これまで300社以上の採用支援に携わり、現在は、採用予算の削減を追求しながら中小企業の採用活動のサポートを行っています。膨大な採用市場データを読み解くことを強みとし、実践につながる具体的なアドバイスをいただきました。最初に、2024年卒の採用市場の中間報告が行われました。
「内定者のうち約7割が第一か第二志望に内定が決定しています。学生にとっては、とてもいい時代。5月末には約7割の内定が決定しており、過去最速とも言えます。この内定決定の早期化は、インターンシップが主流になったことが要因です。現在は8割の学生がインターンシップに参加し、学生と企業の接点が早い。インターン参加した企業からの選考案内を6割の学生が受けていることから、インターンシップを実施していない企業が採用活動に出遅れてしまうことがわかります」と松本氏。
次に、2025年新卒採用でのルール変更について解説いただきました。
「2022年末に、採用直結型のインターンシップが公認され“2025年新卒採用における新たなルール”が決定されました。それは5日間以上のインターンシップをやれば採用活動につなげていいというルールです。1日間のインターンシップがほとんどで、そこから採用活動につなげていた状況下に対する新ルールの影響がどのように出るか、まだ見通しが出ていません。つい先日6/1に解禁されたインターンシップ募集企業数は1万件を超えており、過去最高数と言えます。大企業の動きを同じようにまねるのではなく、中小企業だからこその動きをとっていくことが重要である、とお話されました。 」
最後に、自社に応募が集まらないときのチェックポイントについてお話がありました。
「自社に応募が集まらないときに、①採用時期、②ターゲット設定、③採用手法、④伝える情報の4つを見直してみましょう。①は、年間を通じて募集するのではなく、転職希望者が多い時期に実施することで採用コストの削減にもつながります。②は具体的にイメージし、求める人物を具体的に現実的に調整することが大切です。③は、それぞれの特性を理解し、適切な採用手法を選びましょう。採用手法は日本に9つしかなく、採用したい人材に合わせて、採用手法はそれぞれ変わります。④は、採用したい人材に響かない情報を伝えていることもあります。誰でもいいですよ、というような伝え方をして「いい人が来ない」というのはミスマッチが起きています。特に①と②が違っていることが多いので確認してみましょう」と具体的なアドバイスをいただきました。
伴走型だからこそ、事業者が主体となって自走していく
第四部では、DYNA 実践プログラム参加者によるパネルトークが行われました。株式会社光建専務取締役の正田氏と有限会社フォルマント・テック常務取締役の木全氏をパネラーに迎えました。
光建の正田氏がDYNAに参加したきっかけは、自社の採用活動への課題感です。光建は1961年創業し、電気・水道・ガス・道路などのライフライン建設事業などを行う建設会社。DYNAのおもしろいと感じた点は、「何をやるかは自分たち事業者に委ねられており、伴走型である。事業者を引っ張ってくれるようなプログラムではないところ」とおっしゃっていました。
正田氏がDYNAで取り組んだことは、理念の再構築と接点の場づくりで、まさに現在進行形です。社員のインタビューや対話を重ねて、そこから出てきた言葉をもとにシンボルを制作。DYNA伴走チームともたくさんの壁打ちを行いました。また建設系学部学生に採用のアプローチができない状況から、今は自社が中心となり産学官連携のイベント開催を進めているところです。
正田氏は「DYNAの力を借りて、アイディアを拡張していけることが利点です。実践していく中で、デザイナーやコーディネーターといったリソースを提供してもらえたことや、企画を通じて外部を巻き込むことで、自社単独ではアクセスできなかった人脈にリーチができたことがよかった点です。一方で社内に対する理念の浸透は難しさを感じています。現在準備しているイベントも学生の集客が思ったほど伸びていなくて。やってみて上手くいかなかったら、どうすれば次につなげられるか?という視点で取り組んでいます」と語ってくれました。
フォルマント・テックの木全氏は、DYNAに参加する前には採用活動を手段でしか考えていなかったそうです。フォルマント・テックは、訪問・居宅介護、障がいのある方の移動支援、放課後デイサービスなどの事業を行なっています。DYNAに参加するにあたり、会社の理念に共感する中核人材採用の土壌整備を完了させることをゴールに設定。DYNAで取り組んだことは、ステートメントの作成と中核人材の定義の言語化です。
木全氏は「DYNAに参加して、採用活動に関する知識が深まりました。また自社の存在意義を再認識する機会にもなり、DYNAは採用活動以外にも経営全体に波及する取り組みだと思います。私たちも手段だけでは採用できないと強く感じ、求職者との出会いは一期一会であり、瞬間に共感してもらえる言葉の必要性を感じました。当初は用語に慣れず、戸惑うときもありましたが、伴走してくださる安心感がありました。今は自らデザイン経営の知識や学びを深めています」と語ってくれました。
その他にも、DYNAには経営者だけではなく、右腕となる人材とペア参加がオススメであることや、DYNAに参加された事業者の皆さんとの横のつながりがオープンであり、お互いがフォローしあえる関係性になっていることなど、実践プログラムに参加する際のポイントや、参加後も続く事業運営に好影響をもたらしているというお話をしてくださいました。
最後に、DYNA統括ディレクター重田氏より、DYNAへ参加するための募集要項やワークショップ・実践プログラムの説明を行いDYNAキックオフセミナー2023は終了いたしました。多くの事業者の方のご応募をお待ちしております。