ーDYNAへの参加のきっかけを教えてください。
木全:
弊社では10年ほど前から新卒採用を行なっており、採用した人材のなかから現在1人、2人と組織の中核を担うまでに成長してくれました。ただ、今後も従業員に安心して働いてもらうためには「中核人材が2人いるから安心」ではなく、未来の中核人材を採用し続ける必要性を感じていました。
しかし当時は、採用方法と言えば、就職サイトに採用情報を載せる方法以外に思いつきませんでした。「今まで通り、戦略を立てずに採用を続けていて、果たしていいのだろうか」と漠然と悩んでいたとき、偶然DYNAに関するDMが目に入り、「これだ!」とすぐに参加を決めました。
欲しい人材像の言語化が、自分の強みを知るきっかけに
-DYNAではどのような取り組みをされましたか?
木全:
採用サイトに情報を載せる前にまず、どんな人を採用したいのかを言語化することから取り組み始めました。中核人材が欲しいというときの「中核人材」とはどんな人材なのか、言語化してペルソナを作ることから始めました。
-分析の結果、採用したい中核人材のペルソナはできましたか?
木全:
「これはうちの会社には外せないよね」という要素が、大抵2人の良い部分だったんです。2人の良い部分ばかり集めたら、最終的に現実離れしたスーパーマンのようなペルソナができあがってしまいました。
-理想と現実のギャップは、どのように調整したのでしょう。
木全:
中間発表の際、アドバイザーの澤田さんから「ペルソナも大切だけど、経営理念や企業の魅力も具体化すべきでは」とアドバイスを頂いたんです。確かに、弊社の理念や魅力は時間をかけて話せば分かってもらえるけれど、採用面接や説明会という限られた時間の中で共感を得るには難しいものでした。そこで次に、弊社の理念を伝えるためのステートメント(経営理念のキャッチコピー)を作成することにしました。
互いの理解が深まったからこそ、同じ想いを持てた
-ステートメントの作成とは、具体的にどんなことをされたのでしょうか?
木全:
まず、「5年後にありたい会社の姿」というテーマでムードボードを作りました。ムードボードとは、テーマから思い浮かぶ単語をいくつか挙げ、その単語ごとにイメージする写真や画像を一枚のボードにどんどん貼り付けていくものです。まず私と中核人材2人でそれぞれ作成し、その後、弊社にとって外せない要素について3人で話し合いながら1枚にまとめました。
浅野:
写真や画像を使うムードボード作りは、頭の中のイメージを表現しやすく、中核人材の言語化よりもスムーズに取り組めました。ムードボードを1枚にまとめる作業では、それぞれのライフステージや社歴、経験の違いで、会社や仕事への想いも少しずつ違ってくることに気づきました。
木全:
その後、作成したムードボードをもとに、コピーライターの方から「どんな会社なのか」「中核人材とはどんな人材なのか」といったヒアリングを受け、ステートメント案を作成頂きました。
頂いた案はどれも素晴らしく、正解のない中で1つの答えを見つけなければならない難しい作業でしたが、数あるなかで「人と人が響き合う」という案に、3人ともピンと来たんです。
-みなさんがその案に惹かれた理由は何だったのでしょうか。
木全:
1つ目は、弊社の社名にある「フォルマント」には、「周波数」や「音波」という意味があるのですが、それを活かして「響く」という言葉を使って頂いた点です。
そして、私たちが携わる福祉分野は人材ありきの業界で、弊社は人と人が関係し合って成り立っています。先ほどの「フォルマント」の意味も踏まえて、人と人が関係し合うことを「響き合う」と表現してくださった点が2つ目の理由です。
浅野:
ステートメントを決める際、会社について若手従業員がどう感じているのかも知りたくて、全正社員にどれが良いかアンケートを取ってみたんです。
当然、それぞれがいろいろな価値観の下で仕事をしているので票は割れましたが、DYNAに参加した3人の意見は不思議と一致していたんです。だから、最終的には迷いなく1つの案に決めることができました。
木全:
DYNAの取り組みの中で、互いを知り、会社への思いや将来像を共有できたからこそ、3人とも同じ案に惹かれたのだと思います。
-互いの理解が深まったからこそ、同じ想いを持てたんですね。
木全:
そうですね。あと、社名を活かしてステートメントを作ったことで、会社を今まで以上に1つにまとめるきっかけにもなりました。
弊社の社名はHPでも表立っておらず、従業員も利用者様も、普段の会話では社名より事業所名を使っているんです。その状況に「せっかく社名があるのに、何だか悲しいな」と感じていました。また、訪問介護事業と子ども事業の業務が全く違うため、互いに「違う会社」のような感覚を持っていることも、弊社の課題の1つでした。
今回、ステートメントを作成したことで、改めて「フォルマント・テック」という1つの会社だと意識してもらえたらと思い、事業部ごとの会議を合同でやってみるなど、できることから少しずつ取り組もうとしています。採用のためにDYNAに参加しましたが、経営のさまざまな面で前向きなきっかけをいただきました。
採用だけでなく、人材育成や経営者としてのあり方にも学びがあった
-DYNAの取り組みで学んだことや、発見したことについて教えてください。
浅野:
弊社の強みや雰囲気、欲しい人材を言語化したことで、「こういう人が向いている」と分かったのは大きな学びでした。今までの説明会や面接では、相手の性格や行動、思考を意識せず、こちらが一方的に説明していましたが、今は相手に合わせて質問を変えるなど、アプローチに変化をつけられるようになりました。
木全:
私はDYNAへの参加が、共に参加した社員の人材育成にもつながったと感じています。一般的な受け身の研修とは異なり、自ら考えて行動するプログラムなので、参加した3人とも知識はもちろん、自社の理解度や仕事のモチベーションも向上しました。
また、会社の理念や必要な人材像について思いを共有できたことで、一緒に参加してくれた2人への信頼は、より一層厚くなりましたね。弊社が次のステップに登るためには、信頼できる社員に任せられる状態を作ることが必要だと考えているんです。もちろん、ワンマン経営もひとつの方法ですが、弊社には私より高いスキルを持つ従業員もいますし、私1人でできることなんて、たかが知れています。
私は従業員それぞれの強みを活かしながら、会社を成長させていきたい。そのためには、さまざまな場面で信頼して任せられる人材の育成が必要だと、今回改めて感じました。
採用に関する課題解決のために参加したDYNAでしたが、人材育成や経営者としてのあり方についても学びがありました。今後もこういった研修は社員と参加して、共に研鑽を重ねていきたいです。
浅野:
私はもうひとつ、同年代で中小企業の採用に携わる仲間とのつながりを得られたことも大きな収穫でした。
今まで採用活動で分からないことや悩みがあれば、本やインターネットで調べたり、木全に相談して何とか乗り越えてきました。でも今回、私と同年代で採用活動を頑張っている参加者とのつながりができて、何かに立ち止まったときには気軽に相談できるようになりました。他業種でも、自分と同じような想いや悩みを持つ仲間ができたおかげで、採用や育成の仕事が今まで以上に楽しくなりました。
地道な活動も、未来の採用に繋がると信じて
-DYNAでの学びを、今後どのように活かしていきたいと考えていますか?
浅野:
今後の採用活動では、求職者に弊社の理念や雰囲気を知ってもらうため、そして私たちも求職者の人柄を知るために、インターンシップに注力していこうと考えています。
採用直結型インターンシップが25年卒から解禁されたので、現在はDYNAをきっかけにつながった企業に伴走頂きながら、弊社の事業や社風に触れられる1ヶ月程度のプログラムを設計している最中です。
-インターンシップへの参加を募るために取り組んでいることはありますか?
浅野:
大学訪問や、商工会議所への訪問に取り組んでいます。母校のキャリアセンターへの訪問や大学HPへのインターン情報の掲載依頼をはじめ、ゼミでお話する機会を設けていただくこともあります。現在、ありがたいことに1人2人とインターンシップへの応募者が出てきたところです。
商工会議所では年に一度、大学のキャリアセンターの職員の方や、高校の進路担当の先生との名刺交換会があるので、足を運ぶようにしています。結果にすぐには結びつかない地道な活動かもしれませんが、毎年訪問して顔を覚えてもらうことで、将来の採用に結びつくと考えています。
-DYNAを経て、採用活動の場が広がったのですね。
浅野:
実は大学のキャリアセンターや商工会への訪問は、DYNAに参加する前から木全が1人で取り組んでいたんです。DYNAを通じて、木全と採用に対する共通認識を持てたので、今自分から積極的に採用活動の場を広げているところです。
DYNAに参加したからこそ、今は担当者とどんな話をすべきか、また弊社の魅力の伝え方を意識できるようになりましたし、自信を持って採用活動に取り組んでいる実感があります。まだPDCAサイクルのPLANの段階ですが、今後も試行錯誤と修正を繰り返しながら継続して取り組みたいです。
木全:
私としては、今後は外国人採用にも力を入れていこうと動き始めています。去年から留学生のインターンシップの受け入れを開始し、そこからはじめて外国人の方の入社が決まりました。語学など弊社になかったスキルを持っている人材なので、その方のスキルを活かして採用の場を広げたいです。
具体的には、今年の3月に視察でベトナムに行く予定です。現地の価値観を把握することや、現地で訪問介護をし始めた日本の会社があるとのことで、話を聞いてみようと思っています。今後もDYNAでの学びを活かして、会社の更なる成長に繋げていきたいです。